Nature誌の姉妹誌であるScientific Reports誌に、超伝導体の比熱と臨界磁場に関する数学作用素論的研究を世界で初めて行った大学院理工学府渡辺秀司教授による論文が掲載されました!
群馬大学大学院理工学府の渡辺秀司教授が、電気抵抗がゼロではない常伝導から電気抵抗が完全にゼロになる超伝導への転移が熱力学での2次相転移であることを数学作用素論的に世界で初めて証明したことに引き続いて、今度は、Nature誌の姉妹誌であるScientific Reports誌に、超伝導体の比熱と臨界磁場に関する数学作用素論的研究を世界で初めて行った単独執筆の論文を載せました。論文の題名は、「An operator-theoretical study of the specific heat and the critical magnetic field in the BCS-Bogoliubov model of superconductivity」(Nature)です。
水銀、アルミなどの多くの物質の温度を絶対零度程度にまで下げていくと電気抵抗が完全にゼロになります。この驚異的な現象は超伝導とよばれ、発見者のオンネスはノーベル物理学賞を受賞しました。常伝導から超伝導への転移は、熱力学での2次相転移であることが多くの実験により確認されました。他方、超伝導の場の量子論的理論であるBCS理論は、バーディーン、クーパー、シュリーファー の3人の物理学者によって確立され大きな成功を収め、ノーベル物理学賞が授与されました。
BCS理論ではBCSギャップ方程式とよばれる方程式の解が温度について2回連続微分可能であることを証明せずに、超伝導体の比熱と臨界磁場を扱っています。したがって、もしこの解がそうでなかったら、ノーベル物理学賞が授与されたBCS 理論による扱いは不適切になってしまいます。
このような動機に基づいて、BCSギャップ方程式の解がそうなっていることを数学作用素論的に証明して、解の温度についてのさらなる性質を数学作用素論的に明らかにしました。ただし、ポテンシャルが定数である必要はなく、エネルギーの関数であっても構いません。これに立脚して、転移温度とよばれる温度における超伝導体の比熱の跳びを、転移温度における常伝導についての比熱で除した物理量に対する、より正確な新たな表式を数学作用素論的に与えました。さらに臨界磁場の転移温度付近における、より正確な新たな表式を数学作用素論的に導き、臨界磁場の温度についての1回連続微分可能性などの性質を示しました。このようにして、BCS理論の登場以来、63年にも亘るさらなる未解決の問題を解決しました。