こんにゃくでメタボリック症候群予防~こんにゃく粉入り粥による新しい中性脂肪低下作用発見~
群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学?食健康科学教育研究センター(群馬県前橋市)の葭田明弘助教、木村孝穂准教授、村上正巳教授らは、こんにゃく粉入り粥の摂取が中性脂肪を低下させる効果があることを発見しました。
グリンリーフ株式会社(代表取締役 澤浦彰治 379-1207 群馬県利根郡昭和村赤城原 844-12)が開発した、こんにゃく粉入り粥の糖?脂質代謝に及ぼす影響を解析する研究を立案し、群馬大学医学系研究倫理審査委員会の審議?承認を経て、研究を施行しました。その結果、こんにゃく粉入り粥に血糖値とインスリンの上昇を抑制する効果が認められ、この成果は 2020 年 7月 13 日に Annals of Nutrition and Metabolism 誌に掲載されました。今回の研究において中性脂肪の変化を調べたところ、こんにゃく粉入り粥の摂取により血中の中性脂肪が低下する効果が認められました。更に、中性脂肪代謝の中心的な役割を担っているリポ蛋白リパーゼ(LPL)の血中濃度が上昇することが明らかになりました。この事実は、こんにゃくの新たな脂質代謝改善作用の存在を示唆しています。この成果は2021年6月25日にNutrients誌に掲載されました。
本研究のポイント
- 健常者を対象として行った研究で、通常の粥に比較してこんにゃく粉入り粥の摂取により中性脂肪が低下しました。
- 本研究はこんにゃく粉入り粥が中性脂肪を低下させ、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の上昇を伴うことを示した初めての報告です。
- こんにゃく摂取が中性脂肪を低下させ、メタボリック症候群や心血管疾患の発症を抑制することで人々の健康増進に貢献することが期待されます。
本研究の概要
健常な37~60歳の男性13人のボランティアに対して図1に示すように、各被験者に3種類の粥(五分粥、0.4%こんにゃく粉含有粥、0.8%こんにゃく粉含有粥。いずれも約80kcal)を食べてもらい、摂食前と摂食後30分、60分、120分の時点での中性脂肪と中性脂肪代謝の中心的な役割を担っているLPLをはじめとする脂質代謝に関わる蛋白の血中濃度を測定しました。
その結果、図2に示すように、五分粥にこんにゃく粉(0.8%)を加えたことにより五分粥食後30分後以降、120分後まで中性脂肪が低下しました。更に、LPL濃度は五分粥では食後30分後以降、120分後まで低下した一方で、こんにゃく粉入りの粥ではLPLの低下はなく、120分後には摂食前と比較して上昇しました。
以上より、こんにゃく粉の食後中性脂肪低下作用は、主食と混合することにより強く発揮される可能性が示唆されました。
社会的意義とこれからの展望
本研究は、こんにゃく粉を含む粥がLPLの上昇を伴って中性脂肪を低下させることを示した初めての報告です。中性脂肪を低下させることができた理由として、粥に含まれたこんにゃく粉が胃内容物の粘稠性を高め、食物の胃内通過時間を延長させ、腸腸管の蠕動運動を促進した結果、血中の中性脂肪代謝の中心的な役割を担っているLPLが上昇したことが考えられます。これまでこんにゃくの長期の習慣的摂取による脂質代謝の改善作用の報告はありましたが、摂取後30分から2時間という短時間に中性脂肪が低下する報告はありませんでした。
血中中性脂肪の増加は動脈硬化を進行させ、心血管疾患発症へつながるメタボリック症候群と強い関連があります。特に心筋梗塞や脳卒中のような大血管障害は、メタボリック症候群でも健常人に比べて危険度が大きくなります。健常者からメタボリック症候群への移行を予防することは大変重要なテーマです。今回のこんにゃく粉入り粥の研究成果はメタボリック症候群への移行を抑制して人々の健康増進に貢献することが期待されます。
論文
Konjac glucomannan attenuated triglyceride metabolism during rice gruel tolerance test.
関連リンク
本件の問合先
群馬大学研究推進部産学連携推進課
大江 詩紀
TEL: 027-220-7446
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